日曜日, 8月 11, 2024

本:検証 ナチスは「良いこと」もしたのか?

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 年号を覚えるのが苦手な上に歴史に興味がなく、ナチスといってもヒットラー、ホロコースト、アウシュビッツ、第二次大戦時のドイツの政権政党ぐらいしか知らないのだが、ちょっと興味があって図書館に予約を入れた。多分一年ぐらいまってようやく回ってきた。

 研究者の書いた入門書ということで、内容というか理論構築はだいぶお堅いが、素人にも読みやすく書かれている。「はじめに」では歴史に対する学問的な考え方について説明があり、個別の「したこと」の前に「ナチズムとは?」から始まって「ヒトラーはいかにして権力を握ったのか?」「ドイツ人は熱狂的にナチ体制を支持していたのか?」と素人にも最低限の前提知識を与えてくれる。良い悪いの判断も、①その取り組みは先駆的なものだったのか、②それらはどのような目的で導入されたのか、③実際に「良い」効果があったのか、という3点から分析している。

 結論としては、ナチ政権オリジナルなものはほとんどなく、①ヨーロッパの一部・全体で行われていたこと、前政権から引き継いだもの強力に推し進めた、②「悪い」目的実現のために導入された、③「良い」結果が出たのものはほとんどない、ということだった。

 「ヒトラーはいかにして権力を握ったのか?」では「急進右派の群小政党の一つにすぎなかったナチ党」がいかにして権力を握ったかについて書かれているのだが、これ、日本でも一つ間違ったぐらいでは無理だが、二つ三つ間違えるとあり得ない話ではない。「おわりに」では、「そこでは多くの場合、学校的な価値観への反発が『教科書に書いていない真実』への妄信に直結している。一般に出回っている不正確な情報、怪しげなデマの類でさえ、『教科書的』な見方を否定するものであればいともたやすく『真実』とみなされる。かくも多くの人がこの落とし穴にはまってしまう原因はほかでもなく、そうした情報が権威にとらわれずに『自由』に物を言いたいという欲求と、自分たちは『本当のこと』をしっているという優越感とを同時に満たしてくれる点にある。だからこそ彼らは、断片的な〈真実〉から〈意見〉へと飛躍してしまうことになる。」とあるが、これは twitter を見ていればナチや歴史問題に限らず、反ワクチンやら弥助に関する捏造やら事故から13年もたって出てきた福島原発についてデマをまき散らす大学生など、世の中に広くおこることなのだろう。

 twitter では、いろいろな人たちがデマや似非科学が広がらないように頑張っている。オープンなSNSが生き残って、変なものが暴走しないことを祈るばかりだ。

 あと、この本の参考文献は読んでみたい本がたくさんあった。早速一冊図書館に予約を入れた。

 

 

 

 


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