金曜日, 2月 05, 2021

本:不発弾

  去年の春、小樽商科大学のビジネススクールに入学した。それもあってビジネス系の記事をネットで読むことが増えたので、日経ビジネス電子版の有料会員になった。そんなわけで日経ビジネスのサイトを見ているうちに、去年の連載小説「Exit」を見つけた。見つけたが最後、いつもの調子で7-8時間かけて、一気読みしてしまった。暇じゃないのに...。
 で、そのExitの単行本が出るということでネットの記事が出たのだが、それを読むと、Exit には前日譚があり、Exit の主要登場人物が主役とか。ということで「不発弾」を図書館に予約、順番待ちもなく回ってきた。今回は流石に理性が働いて二日に分けて読了。
 
 Exit も面白かったが、これも面白かった。自分は主人公より4-5歳若いぐらいなので、作中に出てきた金融機関の破綻とかもリアルタイムで見てきたので、古い記憶を探りながら、あの裏側こうなっていたのか、的なものがわかって面白かった。登場人物の一人が、明らかに現実の人物をモデルにしているのだが、最初、全く気が付かなかった。物語の途中で機を見るに敏なその人物が新しい事業に乗り出すところで、モデルとなった人物がわかった。自分は、そのモデルになった人物と同年代で、その人が大手の外資系金融機関のパートナーのポジションを捨てて始めた事業のユーザーでもある。クリーンなイメージがある人だったのだが、考えてみれば若くして外資系金融機関のパートナーになったということは、それ相応の実績を上げたということで、行いのすべてが清く正しいとは言い切れまい。この小説、「塀の上を歩く危ない仕事」ではなく「時間がたてば塀の内側になる仕事」そして、それゆえに、その過渡期を超えるために必要な仕事について書かれている。
 
 なかなか面白い小説だった。金融系の合法と非合法の際どいところを描くという意味では、橘玲の初期の長編を思い出したが、こちらの方がずっとリアリティがある。時間ができたら、この作者の別な小説も読みたい。

本:ホテルローヤル

  この間、テレビをぼーと見ていたら、北海道出身の直木賞作家のインタビューを流していた。受賞作が映画化されたから、ということらしい。その受賞作は釧路のさびれたモーテルにまつわる人間模様を描いたものとか。へー、釧路のさびれたモーテル。面白そうじゃん。ということで図書館に「ホテルローヤル」の予約を入れたら、順番待ちもなく、すぐに借りられた。
 
 短編の連作集で、1話目は設定が無理過ぎてちょっと微妙な感じ。2話目もかなり無理のある設定だが、3話4話と読み進めるうちに何となくわかってきた。これは、自分が今いるのとは違う世界の話。母の実家が道南の港町で、子供の頃、お盆に親戚があつまると、大人たちの噂話にこの小説のネタになりそうな話がいくつもあった。それを思い出すと、急にリアリティのある話に思えてきた。
 
 今の生活がそこそこ幸せと思えてきた。はめをはずさずに、大事に生きよう。