橘玲は好きな作家なのだが、長編小説はたまにしか出ないし、小説以外の本はネタの使い回しが多く、「とりあえず買ってみる」には躊躇してしまう。
この本も書評を読んだ限り、今までのネタの使いまわし+ちょっとしたお遊び気味の短編集という感じで結局買わなかった。その後はすっかり忘れていたのだが、図書館にあるのを見つけて借りてみた。
最初の一編を読んだ後、星新一を思い出した。星新一を読んで感動したのはもう30年以上も昔の話だが、少し前に NHK がショートショートを映像化していて懐かしく思い出させてもらったからだろう。
星新一のショートショートの「SF」を「経済理論」に、「ユーモア」を「ブラック」に入れ替え、ウイットを薄く不気味さを濃い目にし、長めの短編に引き伸ばす。そこに松本零士を一滴たらしてカナメール王子が特別出演。
この間まで NHK で、出社が楽しい経済学という番組があったが、アレを民放の深夜枠ドラマに持っていった感じになるだろうか。
相変わらず橘節全開の内容だが、マネーロンダリングや永遠の旅行者、あるいは雨の降る日曜は幸福について考えようほどのヘビーさはない。その分お気楽に読める。全体を通していえば、ブラック方向に振った大人の御伽噺だろうか。
0 件のコメント:
コメントを投稿