裏表紙の著者略歴を見ると、一人は研究者、一人はライター。ライター氏の著書の紹介の最初に出てくるのが弾氏との共著 (^^;。うーん、身内褒めかな?
基本的には太陽光をレーザ光線に変換し、そのエネルギーでマグネシウムを精錬しエネルギーに使う、マグネシウムは海水中に無尽蔵にあり、それを低コストというか、低エネルギーで抽出する技術も実用化されつつあるという内容。
このとおりに事が進めば万々歳なのだが、オイラ程度のコンピュータエンジニア+科学大好き
たとえば、500メートル四方の土地に「太陽光励起レーザー」を6万基(!)並べてひとつのプラントにする案が出ている(pp196)。
仮に太陽光励起レーザーの MTBFが10年として、6万基あると一日に 16台壊れる。500メートル四方ということは辺に沿って歩くと角から角まで約7分、対角を歩くと10分ほどかかる。このなかにある6万基が毎日ランダムに16台壊れてそれを修理し続けなくてはならない。
太陽光励起レーザーは当然ながら野ざらしで直射日光をまともに浴びる。普通に考えると MTBF 数年がいいところだろう。設置するのも天気がよく日差しが強い場所、最初の計画ではモンゴル、だそうで修理のためのインフラや要員を容易に確保できるとも思えない。メンテナンスコストは相当な額になるだろう。
更に言えば、太陽光励起レーザーを一基50万円としているが、このなかには太陽光を使った冷却装置の価格が含まれていない(pp96)。ちなみにこの太陽光を使った冷却装置には資源量に限りがある(と本書で書かれている)リチウムを使うようだが、太陽光励起レーザーが何十万何百万基と稼動する(本書の計画通り行けばそうなる)状況になったら資源不足になる心配は無いのだろうか?
マグネシウムの燃料電池を使おうという話も出てくる。空気燃料電池としてパソコンや自動車に。リチウム電池や燃料電池をマグネシウムを使った空気電池で代替しようというのだ。
リチウム電池や燃料電池を普及させる上での問題点のひとつに安全性というのがある。何かあっときリチウム電池は火を吹くので自動車には使いにくいとか、燃料電池に使うメタノールは危険物なので航空機の機内持ち込みに問題があるとか。
マグネシウム(危険物第2類)は、メタノール(危険物第4類)やリチウム(危険物第3類)、ガソリン(危険物第4類)より危険そうなのだが、こんなものを自動車に大量に積んだり、航空機に機内持ち込みしたり、コンビニで普通に売っても問題は無いのか?
それぞれの要素技術はなかなか筋がよさそうに見える。が、よく見ると、いろいろと突っ込みどころが満載。大規模化して社会インフラまで持っていくのは無理じゃなかろうか?
「あとがき」によれば著者は「新しい考え方対する否定的な意見」はよろしくない、と書いている。
オイラは新しいから否定しているのではなく、「過去の夢物語の成れの果て」を見てきているので素直に信用できないだけである。事実この本のなかでは化石燃料や核分裂・核融合、太陽電池・地熱・風力などの自然エネルギーについて、少なくてもこれから数十年先の地球全体のエネルギー需要を担える可能性についてすべて否定している。いづれも登場当時は「夢のエネルギー源」だったはずなのに。
この状況下で新しい「夢のエネルギー源」を素直に信じろといわれても無理である。
# 銀の弾丸はどこにもあるまい
自然科学系のこの本が、ブルーバックスではなく PHP 新書からでたのはそういうところもあるのかもしれない。
----
共著者にライターさんがいるせいか、日本語が素直で読みやすく、数時間で読み終えることができた。そういう意味では読んでも損は無い。あ、オイラは金を払っていなかった。この本に数時間を費やす価値はあるが、プラス720円分の価値があるかは現在無職のオイラ的には微妙。
1 件のコメント:
不労所得を与えない y.taroさんの姿勢は素晴らしいですw
コメントを投稿