水曜日, 10月 16, 2013

本:「イノベーションのジレンマ」

 前からちょっと気になっていた本。図書館で借りて読んでみた。
 
 持続的技術で成功した企業は、破壊的技術が自分たちのマーケットを下から襲ってきたときに、うまく新しい技術に乗り換えることができない。その理由は経営者や企業の体質に問題があるのではなく、持続的技術での素晴らしいやり方を破壊的技術にもそのまま適用しようとしたことにある、と説く本。
 
 もっともだと思うところもあれば、これはちょっと..、と思うところも多いが、なかなか面白い本。
 
 ただ、ここだけは突っ込みたいというところは、

1.企業は、その寄って立つバリューネットワークの利益構造にそった製品しか扱えないというが、昔の「松下グループ」は一個100円もしない乾電池から電球、ヘアドライヤーから髭剃り・炊飯器・洗濯機・冷蔵庫・エアコン、ラジカセ・テレビ・オーディオ、住宅用コンセントやスイッチ、さらには住宅まで手がけていた。日本の家電メーカーは、松下ほどではないが、多かれ少なかれ、利益構造にそっているとはとても思えないような製品構成で手広くやっていた。

 今は韓国勢に押されて苦しい状況だが、サムスンも LG も総合家電ということでは、基本構造は同じ。この本の著者のいうことには無理がある。

 ちなみにこの本の中で出てきた「本田」も、バイク以外に四輪車や発電機、船外機やトラクターや除雪機、最近は飛行機まで作ってる。
 そういう意味で、筆者のいう「イノベーションのジレンマ」は商品構成の少ない企業にしか当てはまらないのではないか?

2.破壊的技術は、そのほとんどすべてが失敗するのに、そのことについてはほとんど書かれていない。この本を読むと、破壊的技術にうまく乗れさえすれば成功する可能性が高いように思えてしまう。 また、やり方さえ間違えなければ破壊的技術で事業を成功させれるように書いてあるが、そんなこともない。
 ケーススタディとして電気自動車について書かれているが、この本が1997年に出版されてから、今年で15年以上経つが、電気自動車は地球上のどこであれ、どんな用途であれほとんど普及していない。

 世界中の人たちが、これだけの年月あれこれやってもダメなのだから、ダメなものはだれがやってもダメなのだ。これはそのほとんどがバッテリーの性能が向上しないという技術的原因による。筋の悪い技術はどうやってもダメなのだ。


 それにしても、この本を読むと、iPhone とスティーブ・ジョブスのすごさが改めてわかる。ひとつ奇跡だろう。
 同時に Android の不思議さもわかる。あれはいったい何なのか?
 そして Windows CE。負けるべくして負け続けているのか、それも運が無いだけなのか....
 
 時間ができたら、もう一度ゆっくり読みなおして、細かく突っ込みを入れてみたい本ではある w

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 あと、この本、翻訳に難がある。句としてはおかしくないのだが、文としておかしいとか、文として問題がなくても、文章になると意味が通じないところ結構あった。なにも考えずに英語を直訳したような感じ。
 
 訳者の伊豆原弓は、IT 系の訳書も多数あり、読んだときに、日本語に微妙な違和感があり、読むほうの理解力が足りないのかと思ったことも多々あったが、これではっきりした。
 この人、時々自分の理解できないことを平気で意味の通らない日本語に直訳する。

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