土曜日, 9月 08, 2018

本:がんで余命ゼロと言われた私の死なない食事

 どこで見つけたかは忘れた。本当だったら将来役に立つかもしれないと思って図書館で借りてきた。
 
 中身は...、美味しん坊とか、買ってはいけないとか、マクロビオティックとかをいい具合に混ぜて生存者バイアスでフィルタリングしたもの。科学的根拠は全く示されていない。「がんで余命ゼロ」と医者に宣言された人が実践して生き延びている内容を自ら書いている、ということ以外はよくある民間療法・オルタナティブメディスン系の本。


 「余命ゼロ」の根拠は、体調不良で病院に行ったら、甲状腺がんが見つかり、血液検査で基準値4ng/mlのPSAの数値が1520ng/ml、骨シンチグラフィーで骨髄3か所、左鎖骨、左鼠径部のリンパ節に移転を確認。「ここまでになって、なぜ生きていられるのか、死んでいてもおかしくない」と言われたこと。
 ここは疑いなくその通りだと思う(pp16-17)。
 
 ただ、著者は51歳で上の状態になり、また、「日本人の前立腺がん患者の8割、9割の人には効いているのに、どうして神尾さんだけは効かないんでしょうね。日本人なのに」という、多くの日本人男性とは異なる体質を持っている。
 仮にこの本の内容がすべて著者に対して有効だったとしても、8-9割の日本人の前立腺がん予防・延命に有効かどうかは疑問符が付く。
 
 調味料は高くても上等なものを選べ(第三章)あたりは自分も実践していることなのだが、醤油のお薦め(pp75)に大手メーカーが入っていないのは根拠のないこだわりを感じる。ヤマサ醤油もキッコーマンも原材料表示が「大豆・小麦・食塩」だけの「本物」を作っていて、ちょっと良いスーパーなら普通に売ってる。が、お勧めリストに入っていない。入手性を考えれば入れるべきなのに。醤油の項を読んだ限りでは大企業の製品を避ける理由がないのに。妙なところで美味しん坊あたりにかぶれているっぽい。

 「ホタテの貝殻を1000℃以上の高温で焼いて粉末にしたもの」を水に溶かしたpH12の強いアルカリ性の水酸化カルシウムに生野菜を10-20分つけ置きして有害なものを取り除く(pp108)というのは、不気味。水面に浮いてくる油状のものが「具体的に何がどれくらい数値的なものを測定したわけではありませんが、油光りのする汚い液体を流しに捨てるたびに、もしこれが体に入っていたらと想像して怖くなります」とあるが、pH12の液体に野菜を10分以上つけ置きしたら、そりゃあなにか溶け出してくるだろう。有害成分だけではなく、有効成分も溶け出すのではなかろうか?有機・無農薬の野菜でも同じように「油光する汚い液体」は浮き出てくると思う。「数値的なものを測定」していないのなら、農薬・普通の肥料を使った野菜と有機・無農薬を使った野菜の比較ぐらいはしてほしい。このあたりは買ってはいけない的な怪しさを感じる。
 
 こんな調子で全編突っ込みどころ満載。がんの民間療法系の本としては、著者が標準治療をすべて受けたあとに自身の考える食事療法を始めたことが救いか。

 図書館に返す前にパラパラと見返してみたら、表紙の裏に寄贈のスタンプが。買った人も手元に置いて実践しようとは思わなかったようだ。
 
 地震の影響で停電が続いているせいで長々と書いてしまった...

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