乳がん(と前立腺がん)の原因は牛乳(やチーズやヨーグルトなどの乳製品)と主張する本。この種の、原因・治療法のはっきりしない病気や体調不良の原因を、常識的にはとても考えられないようなものだとする本は結構あり、そしてお約束としてその原因をとりのぞたいたおかげで病気が治ったのが筆者。この手の、いわゆる医学の常識を否定する本は今年に入ってからだけでも2冊読んだが(こちらとこちら)、この本は別格。
この本の著者はもともと優秀な科学者で、自分の乳がんが再発したことから乳がんを徹底的に研究。その結果、原因が乳製品にあることを突き止め、乳製品の摂取を一切止めたところ、余命三ヶ月、長くても半年といわれたガンが見る見る小さくなりなくなってしまったそうだ。
この闘病記だけなら、あ、そう、そんなこともあるだろうね、で終わるのだが、科学者としての視点での検証を読んで納得がいった。
牛乳というのは、その生物としての種の子供を成長させるために必要な栄養が含まれているのだが、それとともに成長を促すためのホルモン類が多量に含まれている。子牛のためのベストバランスの栄養・ホルモンカクテルである牛乳を人間が飲むことによって色々な悪影響が出る。その中には乳がんや前立腺がんを成長を促す物質が入っている、とのこと。
なるほど、それは理にかなっている。
畜産農業が商業化されて、他にも人間の体調に悪影響を与える方向に牛乳の成分が偏っていることもいろいろ書かれているが、牛乳というか、哺乳類の乳というものが他の種、それも成長した種が飲むものではないというのは基本的に正しいのだろう。
ちなみにこの著者、この本や関連する一連の著書のおかげで「英国王立医学協会」の終身会員となったそうだ。医者でもないのに。
後半は著者が現在実践している健康法が書かれているが、乳製品を一切摂取しない、という以外は特にめずらしい健康法ではない。ただ、たとえば脂肪の説明では飽和脂肪酸、単価不飽和脂肪酸、多値不飽和脂肪酸の違いについて分子構造レベルから説明があるなど、フツーの人ではちょっとついていけない。
最後の章では、なぜ乳製品が乳がん(と前立腺がん)に対する(肺がんに対するタバコと同程度に)明らかな危険因子なのに、それが広く知られていないかについて書かれている。著者が英国人なので、例として取り上げられているのは牛肉と狂牛病の関連についてだったが(原因だと認める直前まで、国は安全だと言い続けていたそうだ)、日本だってエイズやB型肝炎の問題をみれば、「お国」は全く当てにならないのは明白だろう。
タバコでさえほんの20年ぐらい前までは「健康のため吸いすぎに注意しましょう」としか書かれていなかったのだから。
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参考文献は巻末に100件。みたところすべてに発行年と号数、ページ数が書いてあるので、その気になれば裏取りは容易だろう。
こういう内容の本だから、相当風当たりは強かったらしいが、原著が出てから日本語版が出るまでの8年間、「誰ひとりとして2000年初版の内容に一文たりとも変更を迫るような科学的事実を提示することは出来なかった」そうだ。
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中学校時代は、給食であまった牛乳をかき集めて飲んでいた記憶がある。そのせいで 180cm の身長を得られたのかもしれないが、太りやすい体質と男性にしては大きな胸もその影響かもしれない。
鼻が詰まりやすくなるので、牛乳は飲まないことにしていたのだが、この本を読んだら他の乳製品も摂りたくなくなった。
「健康のため」に牛乳・乳製品を食べるのは、これからはやめよう。
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この本で唯一薦めているサプリメント「ビール酵母」を買ってきたら、原材料に「ミルクカルシュウム(乳由来)」が orz。カルシュウム以外の成分が除去されていることを祈るしかない。
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この本によれば、乳製品をほとんど食べない(昔の)アジア系の食生活では、乳がんはほとんど起きないことになっている。
だが、世界最初の、日本で行われた全身麻酔下による手術は乳がんに対するものだったそうだ。と、すれば、乳がんは当時の日本ではそれなりにポピュラーな病気だったような気もする。
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