「銃・伝染病・鉄」が面白かったので、続編ともいえる本を図書館から借りてきた。
歴史の中で、一度は栄えたが崩壊していた文明の、その崩壊した理由を調べていくことによって、今の世の中がどれぐらい危ないところに来ているか、どうすれば生き残れるかを書いた本。
最初、アメリカの風光明媚なモンタナの「現代」から始まる。豊かな自然がのこり、都会に住む人々からは憧れの目で見られる地域が、実は数々の理由でもともと住んでいた人たちが生活していくには限界に近いところまできていることが語られる。
これはある意味日本でも同じことで、自然の豊かな田舎は働く場所がなく若者は去り高齢者ばかりが残って、町として存続が危ういところがいくらでもある。
そのあと、歴史上の滅んでいった文明について詳しく取り上げる。アイスランドは劣悪な条件の中生活水準を大幅に落として命をつないできたそうだ。最近になって、やっと繁栄してきたところまでは書いてあるが、それが今回の金融危機で崩壊寸前になっていることはさすがに予想できなかったようだ。
続いて今現在滅びかけている国や、ぎりぎり踏ん張っている国について語られる。オーストラリアは牛肉や小麦の輸出国として有名なので豊かな農業国だと思っていたのだが、政府の補助金を使ってやせた土地でなんとか農業している(=実はコスト的にペイしていない)国だそうな。
最後に今までの考察の上で、世界はこのあと滅んでしまうのか否かが語られる。
これを読んだ後では、全世界を巻き込んだ今回の経済危機は長期的にみて現代社会にとっては良かったこと---少なくとも延命策にはなった気がしてくる。先進国の生活水準が落ちるということは、地球にとっては環境負荷がだいぶ減ることになる。このままパラダイムシフトが起きて、大量生産・大量消費のトレンドが変わってくれれば良いのだが。
日本では格差が広がって生活水準が極端に下がった人が増えているが、これも「文明の水準を落として生き延びる」意味で悪くないのかもしれない。
長期的にみれば、中国人の多くの生活水準が今の日本人レベルに上がるよりは、日本人の多くが中国人の生活レベルに合わせるほうが現実的な選択だろう。
----
今年はサボってしまったが、ここ何年か年末に、国境無き医師団に少しばかりの寄付をしていた。栄養失調でやせ細って死んでいく子供たちがかわいそうで。ただ、この子達がここを乗り切っても、その貧しい国で幸せに生きていけるのか、国がより貧しくなるだけではないかとずっと心に引っかかっていた。
この本を読んで、少しだけ悩みが晴れた。来年からは環境保護団体に寄付をしよう。
----
ちなみに、下巻の最後にある「参考文献」の記述のなかに、あのビル・ゲイツがなぜ慈善団体の活動に乗り出したかの考察がある。オイラ的にはかなり意外だったが、大いにありそうな話ではある。
0 件のコメント:
コメントを投稿